コミュニケーション講師の
仕事をしていると
「こういう場面のときは
どうすればいいですか?」
「こう言われたら
どう返せばいいですか?」
という相談をよく受けます。
先日も、
小学生の保護者向けの講演会で
「反抗期の子どもたちに対して、
上手くコミュニケーションを
とる方法を教えてください」
という質問をいただきました。
わたしの考えは
コミュニケーションで
一番知っておいて欲しいこと、
それは
「これをすれば
正解ということはない」
ということです。
お医者さんの薬でさえ、
この医学が進歩した今でも
絶対に治る薬はありませんよね。
人によってはこの薬が合う、
合わないってありますよね。
コミュニケーションは
もっとアナログなものなので、
これを使えば絶対に大丈夫だよという
ものは薬以上にありません。
なので、
反抗期の子どもに対する
正しい接し方なんて
正直言ってないのです。
コミュニケーションで大切なのは、
これをやればいいとか、
これをやれば間違いないとか、
これをやっていれば大丈夫とか、
こういうことをすべきとか、
そういうテクニックを学ぶことではなく、
【どれだけ相手に心を傾けられるか】
が重要になってきます。
「反抗期だからこれをする」ではなく、
まずは今うちの子は
何を考えているのかな、
どういう状況なのかな、
を考えてあげること。
で、もしわからないなという時は、
相手を信じて諦めましょう。
そして、ここで大切なのが
【信じて待つ】
ということです。
最初からコミュニケーションの
答えを求める人は、
まずその時点で相手を
信じていないことが多いです。
「なんとかしたい!」
「私が何かすれば良くなるはずだ」
と思っているし、
「私が何かをしてあげなければ
どうにかなっちゃうんじゃないか」
と相手の可能性を
信じることが
できない状態だったりします。
そうではなく、
相手の可能性をちゃんと信じて
「うちの子だから大丈夫」とか
会社の場合には
「うちのスタッフだから大丈夫」と
まず信じてみましょう。
信じて待つって
すごく難しいことなんだけど、
すごく大切なことなんです。
わたしの家族のことになりますが、
私は10代の頃から
新宿2丁目に入り浸りでした。
毎週末、多い時では
平日も行っていました。
そして朝帰りをよくしていました。
でもその時親は
すごく不安だったと思いますが
「今どこにいるの?」
「何時に帰ってくるの?」と
私のことは問いただすことは
ありませんでした。
でも大人になった今は、
その放っておいてくれた経験が
自分にとって
すごくありがたかったことだなと思い、
成人してから
「なんでお母さんは私が
夜遊びをしていた時に、
私を止めなかったの?
咎めなかったの?」
と母に聞いてみたことがあるんです。
その時母が言ったのは
「あなたはあの時悩んでいたでしょ?
あなたもあなたで自分のことを
わかっていなかったでしょ?
そんな時に、あなたは何したいの?
何時に帰ってくるの?
どこにいて何をしているの?
と聞いてしまったら
あなたは家を”自分の居場所”だと
思えなくなってしまうかもしれない。
だから私は不安だったし、
心配もしたけれど、
うちの子だから
大丈夫と
信じて待つことにしたの。」
ということでした。
私は母の偉大な愛に、
今すごく感謝しているし、
私自身はそれがまだできないな、
まだまだだな、と思わされました。
私は自分のお店をやっていた時、
自分のスタッフが
悩んでいそうだなと思ったら
「あなた今悩んでいるよね?
なんかあったら言って。
もしかしてこういうことで
悩んでいるんじゃない?
こうしたらいいんじゃない?」
とアドバイスをしてしまっていました。
そうやってすぐに
手を差し伸べていました。
それが愛だと
思っていたからです。
でもそんな私の行動が原因で、
余計スタッフに辛い思いを
させてしまっていたんだなと
今となってはわかります。
悩ませてあげること、
考えさせてあげること、
それも愛なんだなと。
こういう時はどうコミュニケーションを
とったらいいのでしょうか?と聞かれたら、
もちろん私は
コミュニケーション講師なので
いくつかの案はお伝えします。
「こういう考え方もあるんだよ」
「もしかしたら
こういう状態かもしれないよ」
「こういうのやってみたらいいよ」
という考え方やテクニックは
いくらでも持っています。
けれども、
私はそれをむやみに
教えようとは思っていません。
できれば、一緒に悩んで欲しいし、
相手を信じて待っていて欲しいし、
相手がどういう状態なのかなと
相手に心を傾けて欲しいからです。
良好なコミュニケーションを
とるためには、
答えを求めるのではなく、
相手に寄り添い、
相手を信じることこそが、
相手が喜ぶコミュニケーションになるのです。